2018年2月24日土曜日

オンボードプリアンプ続報

アップデートされたSapphire Onboard Preamp、色々な方にインプレッションして頂いています。



山本詠 氏のF Bass BN-5や…



武田元気 氏のKSD5弦などなど…。

どちらも元々パッシブ・アクティブ切り替えできるタイプの楽器でしたので、よりプリアンプをonにしたときの音の変化などをジャッジして頂ける環境でした。いわゆるオンオフでの変化というよりも、アクティブ時はパッシブの音を基本にEQで足したい帯域を足せる…というコンセプトですので、元々パッシブ派の方にも好評ですね。

こちらのおふた方は当方に直接楽器をお持ち込みして頂き、プリアンプの組み込み作業を行いました。作業時間は1時間程度でしょうか。こういったことも可能です。もちろんプリアンプ単品でも販売していますから、ご自身で組み込んで頂いたり楽器店などに組み込み依頼されるのもよいと思います。

2018年2月21日水曜日

Acoustic model220の修理

Acoustic model220 ベースアンプの修理及びレストアです。
Acoustic Control Corporation社は60年代当時から主流のチューブアンプではなく、ハイパワー重視のソリッドステートアンプを製作していたメーカーです。今となってはヴィンテージアンプの部類ですが、ジャコ・パストリアスの使用で有名だと思います。(Acousticブランドは現在も現存しますが、会社としては別企業で製造されているモデルも全く別物です)model220は全段オールディスクリート時代のもので、4Ωで200W出せるモデルです。この上の320というモデルだと4Ωで300W、更にプリアンプが2ch搭載という当時としては最上位機種になります。ジャコが使用していたモデルもこちらですね。各モデルは最大出力の違いでドライブ電圧が違いますが、プリアンプ部分は概ね同じ回路です。

今回はジャンク同然の個体を復活させるところまでを紹介します。

いわゆるジャンク状態。そして汚い!

まず、見た目がボロボロで筐体も破損がひどく、現状としては電源が入らないような状態です。パワーアンプのヒューズが切れている場合もありますが、今回は問題なし…となると、やはり電源回路周りが壊れているようです。チェックしていくと、恐らく強い衝撃を与えたせいか内部のAC配線が切断、更に電源回路のパーツが破損していました。回路図を見ながら、テスターを当てていき部品をひとつずつ交換していきます。一通り交換を終えてから再度通電すると……LEDが灯り電源が無事に入りました。

電源が復活!

ひとまず電源が入るようになったので、筐体やアンプ内部のクリーニングに入ります。

左側が汚れたままの部分、右側がクリーニング後です

とにかく酷いのがタバコのヤニ!フロントパネルは完全に変色しています。タバコのヤニで特に厄介なのが埃と合体してネバネバ状の臭い物体に変化することです。これが機材の内部に入り込むと、スイッチの接点不良や回路をショートさせたりする直接の原因になったりします。古いスタジオの卓をメンテで開けてみたらそのネバネバだらけだった…なんてこともしばしば。機材や楽器に対しては百害あって一理なしですので音楽やっている人はほんとタバコはやめましょう…。

パネルは無水エタノールや金属磨き剤を使って、丁寧に磨き上げていきます。そうすると段々とヤニ汚れの下から元々の色味が出てきました。水色のストライプの部分がわかりますか?これが元々の色味です。左側はまだ磨いていないヤニまみれの部分。いかにすごい汚れかがわかりますね。(VintageKingだと毎日こういう作業をやっているそうです)フォーンジャックなども同じく金属磨きで磨いていきます。フロントの入力ジャックはかなりやれていたので、今回は新品のジャックに交換しました。ここは消耗品ですからね。きちんと動作するほうが大事です。

ついでにヤニと埃だらけの基板も綿棒と無水エタノールで掃除を……この作業中もものすごく臭ってきます……(^ ^;

おおまかに綺麗になったところで今度は音声部分も含めてチェック……プリアンプ・パワーアンプ共に音は出るようです。しかし、部品の老朽化や先のヤニと埃で多くの部品がくたびれている状態ですので、電解コンデンサ含め摩耗が激しい部分はすべて交換していきます。いわゆるリキャップ作業に入りましょう。

コンデンサ交換前

コンデンサ交換後

こちらはプリアンプ基板ですね。全ての電解コンデンサを交換します。ボリュームのガリが少し気になりますが……接点を清掃する程度にとどめてこのまま使うことにしました。コンデンサを交換するときはパターンを痛めないように半田バキュームを使います。ついでに将来的にクラックが起きそうな部分(基板付けスイッチやボリュームの付け根など)は半田を盛り直しておくとのちのちのトラブルが防げます。

あ、ちなみに背面パネルに取り付けられた黒い缶のような部品がありますね。実はこれDI出力用のトランスです。この220は下位機種の120と違ってバランス出力も付いているんですね。恐らく自社製のトランスだと思いますが、今となってはこういう回路のためにオリジナルのトランスを使うことはほぼ無いので貴重かもしれません。

変わった形の放熱器

もちろんパワーアンプ部分もリキャップします!(リキャップ後は写真撮り忘れました…)ドライバ段のトランジスタに何かすごい形の放熱器が付いていました。この形は初めて見た気がします…非常にいかついです。

取り外したコンデンサ

取り外した電解コンです。長年の劣化と熱で一部黒くくすんでいるのが分かるでしょうか。容量抜けや破損する前に交換するのが吉ですね。40年近く交換されていないものですので。

アメリカン電機の電源プラグ(新品)へ交換

リキャップを終えたあとですが、電源プラグがボロボロなうえにお粗末な民生用のものが使われていたので、堅牢なアメリカン電機の3Pプラグへ交換しました。Panasonicの定番WF5013Kも悪くないですが、それより更に価格がアフォーダブルで端子が非メッキなのが良いですね。

そして一通り作業が終わったので再度電源を入れ、問題ないことを確認。通電したまま1日ほど放置し、通電し続けた状態でも問題ないことを確認します。更にこの間に破損していたフレームの一部をパテで補修しました。(左上の部分)

すべての作業が終わり、無事復活

最後に実際にベースを繋いで音声系をチェックします。プリアンプ、パワーアンプ共に正常に動くことを確認しました。これで完全復活と言ってもでしょう!

古いアンプですが、きちんとメンテ&清掃をした状態で使っていけば、まだ向こう10年20年と使える名機ですので、もし燻らせている…という方が居ましたらご用命ください。費用はリキャップ及び清掃が¥40,000〜です。

(その後)


フレットレスベース・プレイヤーの織原さんにお買上げ頂きました!

2018年2月14日水曜日

設計中のもの

現在基板を設計中のものです。最近は手よりも頭を使っています。

・BA283互換プリアンプ基板

文字通りNeve BA283と同等の回路をもつ基板です。
ソケット無しで直接基板からワイアードできるようになり、キットでの販売も考えています。
トランスさえあればすぐにマイクプリ化が可能です。

・API2520評価基板

API2520と互換性のあるディスクリートオペアンプをテストできる基板です。
前後にトランスを繋げばそのままマイクプリにも。

・バランス出力回路基板

アンバランス信号を+4dbu/600Ω対応のバランス信号で出力する回路です。
ステレオ対応。上記の2枚とも組み合わせられる予定です。

↑この3枚は来月中には完成予定です。
これからは完成品だけでなく基板の頒布もしていくと思います。

・LED型ディスクリート電源基板

定電圧回路にツェナーやスイッチングダイオードではなくLEDを採用したレギュレータ基板です。
三端子やオペアンプなしのディスクリート半導体のみを使います。
現段階では試作および研究中ですが、年内に実用化できればいいと考えています。

2018年2月10日土曜日

Neve1272を改良する(ラインレベルも受けられる!)

Neve1272

一般的にNeve1073,1066等の代用HAとして使われることが多いNeve1272ですが、実は大きな問題点があります。実際に使ったことがある方は実感したことがあると思いますが、かなり入力が歪みやすいのです。特にマイク録音に関してはソースがピーキーになりやすいですし、マイク本体が真空管マイクなどになると大元の出力が大きめになりますので、余計に歪みやすくなります。しかも、オリジナルのラッキングものにはPADスイッチが付いていないことも多い…と実際エンジニアさんもお悩みの方が多いはず。今回は、そういった一連のウィークポイントを解決する改造を紹介したいと思います。




そもそも入力が歪みやすい原因を探ると 、1272の構造に問題がありました。元々ラインアンプではあるのですが、入力トランス(10648)を通過したあとにそのままアンプであるBA283へ入力されるようになっています。BA283はご存知の通りシングルアンプで入力初段のエミッタ抵抗値でゲインを調整するようになっているうえ、更に既にトランスの昇圧で+6dbの利得がその前にあります。なのでこの時点で信号が大きくなりすぎます。Neveの動作電圧は+24Vですから元々ヘッドルームも狭いことも相まって、クリップし易かったのです。

つまりこれを改善するにはアンプの初段の手前で信号をある程度トリムする必要性があります。ここで入力を調整しつつ後ろのアンプである程度信号をゲインアップできれば、Neveの音色を活かした音作りも可能になりますね。そこでこのように配線をし直しましょう。

Neve 1272 改造図

追加で必要な部品は5kAカーブのボリュームと240Ω、22Ωの抵抗、あとはトグルスイッチです。
(プッシュプルスイッチ付きボリュームでも可)
入力トランスの負荷抵抗は不要なので外してしまいましょう。

見ての通り、入力トランスの直後に5kAのボリュームで信号をトリムするようになっています。ここで信号を可変で絞ることにより、かなり大きな信号でも歪みづらくなり融通が効くようになります。またフロントアンプのゲイン調整用抵抗(240Ω)は固定にしていますが、ここをトグルスイッチで22Ωに切り替えることにより、ゲインが+18dbとなりますのでトータルゲインは今まで通りトランスの昇圧分を含めて60db近く稼ぐことができます。(リアアンプのゲインを調整する端子“K”はオープンでゲイン固定しています)入力インピーダンスは1.2kΩとなります。

増幅前の信号をボリュームに通して音質的にいいの?と思う人もいると思いますが、ひとまずお試しください。違和感はほぼないですし、しかもゲインがスムーズに可変できるようになった使いやすさのほうに感動すると思います。特に1つの入力でマイク/ラインレベル両方をこのまま受けることができますから、サミング・アンプとして使う場合は非常に便利です。オススメです。

いわゆる1272タイプのクローンはオリジナルの回路を踏襲しているため、このヘッドルームの狭さ・歪みやすさも継承してしまっているのですが、新しくNeveタイプのプリアンプを製作する場合はこちらの回路で作ったほうが良い結果が得られると思います。PADも不要ですしね。

2018年2月5日月曜日

チューブラ型のコンデンサ

BA283のリキャップ作業をしていました。最近よく使いかますからね。古いコンデンサーは全て新品に交換します。

日本では電解コンデンサは殆どが縦向きに実装するラジアル型と呼ばれるものですが、海外の製品だと横向きに実装するチューブラ型(Axial型)が使われていることが多いので、元々チューブラが付いていた場所には同じチューブラのコンデンサを再度付け直します。

ニチコン・チューブラ型VX

慣れていないと間違えやすいのがコンデンサの極性で、矢印(>>>)が向いている先がマイナス側です。ラジアル型と違って+の記号がついていないものが殆どですので、間違えて逆に付けて爆発させたりしないようにしましょう。

国産コンデンサだとチューブラの選択肢が殆どないので、オリジナルに準じてフィリップス製のチューブラをいままで使っていたのですが、最近Vishayブランドになって見た目が変わったようです。ちょっとまだ違和感があります。

2018年2月1日木曜日

マイクプリのトランス交換

年始のドタバタしていたときの作業ですが…。

Neveクローンのマイクプリアンプに搭載されているトランス一式をCarnhil製に交換して欲しい、という依頼です。しかも2台です。GoldenAgeProjectという比較的安価でクローン機材を多く作っているところのPRE73-DLXという代物です。

作業前の状態

中身はこんな感じ…。ハーフラックで電源は外部アダプターから…という低価格帯の仕様ながら割としっかりとしたものです。入力用のトランスがマイクとラインでそれぞれひとつずつ、アウトプット用のトランス出力+ディスクリート回路のようです。手前のオレンジ色の箱はPADやフェイズ用のリレーですね。


BA283を模したアンプ部

ざっくり見た感じではBA283の回路を基本とする1272クローンのようなプリアンプといった感じです。画像上で見ると内部左側にパワートランジスタの2N3055がありますね。この部分がアウトプットアンプです。インダクタを挟んで右側にはプリアンプ回路が実装されています。BA283を二分割したような構成です。

まあ詮索はさておき早速本題のトランス交換作業に入りましょう。先述の通りトランスは全部でマイクインプット、ラインインプット、アウトプットの3つあります。アウトプットトランスはケースに直接ネジ止めされていますから外して交換するのは容易です。問題は基板に直付けタイプのマイクとラインのトランス…。


純正トランス

最初からCarnhilに対応している基板

マイクとラインのトランスですが、横に別のスルーホールが既に空いているのが分かると思います。実はこのマイクプリアンプ、最初から純正とは別にCarnhilのトランスを載せること前提とした基板になっているんです。これなら交換はともかく、出荷前に2種類のトランスを自由に載せることができますね。よく考えられています。

しかし今回は既に純正のトランスが載っている基板ですから、まず純正トランスを綺麗に基板から外す必要があります。これがなかなか難関なんです…。何故かと言うとこの基板は見ての通り両面基板ですので部品が乗るスルーホールの表側にもランドがあります。半端に熱を加えてしまうと半田が表側に流れ込み、全く溶けないような状態になってしまうんですね。なので電動半田バキュームを使って短時間でスルーホール内の半田を一気に吸い取ります。ですからいわゆる吸い取り線での作業は無理です。基板やトランスを痛めるどころか、スルーホールを壊して基板が再起不能になりますので、専用の道具を持っていない人は「自力でできそうだからやってみよう!」なんて思わないでくださいね!

早速半田バキュームを使ってサクサクとトランスを外して、新しいトランスを取り付けます。

交換作業後

無事に作業が終わりました。アウトプットトランス側は、元々の配線材の長さが結構ギリギリになるので慎重にカットしてから繋ぎ直す必要がありました。

エントリ書くほどの作業内容でもない気がするのですが、半田バキュームなしで作業しようと思ってはダメよというのを書きたかったんです。ホントに機材壊れますので。適切な道具を持っている人に頼みましょう。

ちなみにこう書くとサクっと短時間で作業終了しているようにみえますが、実際は機材をバラしたり、配線のパターンをチェックするのに時間が掛かっているので超楽!な作業では決してないですよ…。

2018年1月15日月曜日

新しいオンボードプリアンプ!

新しいオンボード・プリアンプ

去年漠然と作りましたSapphire OnboardPreampがこの度アップデートしました。

何が変わったか…というと

・モジュールをPCB化することで31*45mmと小型化。
・省電力化。バッテリーの持ちが長く。
・基板上にアウトプットトリムが標準で付き、自分で調整可能に。

といった感じです。さらっと書いてしまいましたけど、かなり取り扱いしやすくなりました。PCBにしたことで誰でも簡単にインストールできるような仕様になったので、ようやく単体で一般の方にも販売できるようになりました。基板本体も小さくなりましたし、キャビティの大きさがあまりない楽器にも入りやすくなったのではと思います。

省電力化は言わずもがな、アウトプットトリムを内蔵したのも地味に便利になりました。今までは希望の場合のみ出力側に外付けしていたものですが、それを標準で基板上で操作できるようにしましたから、ドライバーが一本あればいつでも好みのレベルに調整が可能です。例えばBassをEQフルブーストで使うときに出力が大きくなりすぎる……なんて場合は予めトリムで絞り気味のセッティングにしておいてレベルを調整するとか、そういう使い方もあります。

サウンドというかアンプ部分の基本仕様は変わっていません。初段に東芝のJ-FET、2SK30のバッファーを通過して十分にインピーダンスを下げた後にEQ回路>出力回路というのは今までと同じです。色々試しましたがやはりこれが一番トラッドでバランスの良い音になるんですね。

ジャズベースタイプの楽器にはもちろんマッチしますし…定番系のプリのように強烈な癖もないので、デュアルコイルを載せたハイエンド系ベースなどにインストールしても面白いと思います。良質なバッファーを搭載しているので、エレクトリック・アップライトや他の楽器でも対応できますよ!

価格は今までとほぼ同じでtax込み¥12,960です。直販の場合は送料サービスしようと思います。数少ない良質な国産オンボードプリアンプ、ぜひよろしくお願いいたします。